バンガード|写真家 小澤忠恭氏と山本まりこ氏が語る トラベル三脚&バッグの魅力

2017年2月25日(土)・26日(日) 、CP+2017のバンガードブースで、写真家の小澤忠恭さんと山本まりこさんのトークイベント「写真家 小澤忠恭氏と山本まりこ氏が語る トラベル三脚&バッグの魅力」が行われました。

小澤「バンガードのブースにようこそ。去年に引き続き、今年も登場させていただきます。今年は山本まりこさんに写真をたくさん見せてもらって、僕もまりこワールドに浸りたいと思います」

山本「山本まりこです。よろしくお願いします」

小澤「まりこさんも僕も、バンガードの三脚のファンなんです。ファンである理由はたくさんあるのですが、一つは物を作っている姿勢がいいよね。ひと昔前の日本の企業が持っていたような、『好きでしょうがないから作っている』と言う感じがするんですよね」

山本「確かに毎回バンガードさんとの打ち合わせは熱いし面白いですね!」

小澤「今回バンガードから新しい三脚が出るのですが、見分けがつかないものを4つも出すんだよ(笑)。ひと昔前のカメラメーカーって、同じ焦点距離でほぼ同じレンズを2つ出したりしていたんです。ボケのわずかな違いとかでね。これはメーカーが元気がいい証拠なんです」

山本「少しの違いなのに、人によって『これがいい!』と言うのが絶対違うのが面白いですよね。わたしが社長なら『1本に絞れ』って言っちゃうかも(笑)」

小澤「まりこさんの写真は一見女性っぽいのですが、どうも骨太なところがあると思って普段から見ていました。ここで、どういう写真を撮るのか見てみましょう」

山本「わたしは去年の11月に神奈川県の街に引っ越して、築80年くらいの古民家暮らしを始めました。ずっと東京に暮らしていたのですが、実は地に足をつけて暮らしたいなと思っていて、旦那さんの実家の近くで物件を探していたんです。いくつか物件を見てなかなか納得できない中、ネットで一目惚れしたのがその古民家でした。内見しないで決めたんですよ(笑)。二宮という街なのですが、駅前に吾妻山という小山があり、そこから相模湾が見えるんです。菜の花がきれいで、富士山も見えます。引っ越して大体3ヶ月くらいですね」

山本「古民家の後ろに小山があるので、古民家に続く私道に入ったときに急に暗くなるんです。だから夜には星がたくさん見えるんです。そんな星を撮ってみた一枚です。自宅と星を一緒に撮れるなんて、自分の中にそんな人生があると思っていませんでした。すごく嬉しいなと思いながら、写真を撮っています。このときはバンガードさんのヴィオという三脚とカメラのライブコンポジット機能を使って、一回シャッターを切っておうちで味噌を作っていました(笑)」

山本「続いてエアリーな写真をお見せしたいと思います。わたしは広島県の世羅高原というところが大好きです。思い浮かべてみてください、春はチューリップの花畑。夏はひまわり、秋はダリア。本当にきれいなんです。」

山本「夏はひまわり」

山本「秋はダリアでいっぱいになります」

山本「先日は冬の世羅高原にこんな格好をして写真を撮りにいきました」

山本「三脚を持ってリュックを背負っています。先ほどの花畑が、冬は真っ白になります」

山本「ダイブしてみました」

小澤「三脚を使って自撮りしているんですね」

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山本「その後、カメラを三脚に添えてタイムラプス撮影をしました。これを撮りながら、わたし自身は別のところへ行って雪の景色を撮っていました」

小澤「これがまりこさんがプロデュースしたカバンですね。なかなか男には思いつかないものだと思うのですが、女性的には使い勝手がよさそうですね。なかなか僕も気に入ったので、ムービーを作ってみました」

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小澤「今の時代は一人でも編集ソフトなどでこういった動画を作ることができます。機内持ち込みができるサイズのこのトラベラー三脚ですが、一脚としても使えるんです。今のムービーで僕が写っていましたが、これを使っています。片手で持てるのでとても使い勝手がいい。カーボンですし、軽いところもいいですね」

山本「女性の力でも片手で持ち上げられますね。軽くていいですね!」

小澤「今は軽くて優秀なカメラがたくさんあるので合わせて使うといいですし、液晶も動かせるから自撮りもできる。ところで、僕は『自分探し』とか『自分にご褒美』っていう言葉が嫌いなんですよ、自分というサイズが小さいから。世の中に写真がたくさんある中で、自分を撮ったものがすごく気になる時代らしいんですよね、今。みなさんそんなに自分が気になるんでしょうか。僕は提案したいのですが、一回『自分』という言葉を禁止してみたらどうかな。これを表す別の言葉を考えてみるということ。何も社会のために働けということではないんですよ。『自分探し』というけど、自分はいつもそこにいるんです。『自分探し』というのは『評価される自分探し』になってしまっているんですよね。まりこさんが『エアリー』という言葉を思いついたように、自分を表す新しい言葉を考えたいよね。さっきの花畑の写真を撮れるのはまりこさんしかいないんですよ。だから、新しい写真を撮りたければ自分を新しくするしかない。まりこさんや僕と同じ写真を撮っているうちは練習中ですよ。みなさんには旅立って行って欲しいんです。」

山本「なるほど…」

小澤「今はネット社会なので、日本人全員が読んでいるような新聞は無くなってしまったんです。ネットで自分の好きなグループ・好きな話題だけでニュースを選べるようになってしまった。同じように写真も、自分の写真を評価してくれる中だけで楽しいものになってしまった。自分が評価していないものはもう見ない。まりこさんの写真は僕は好きだけれど、僕が撮る写真ではない。でもそれを見ることで僕はちょっと大きくなるんです。そのちょっと大きくなることを僕は『自分』と言いたい。自分が好きじゃなかったり、苦手だったりするものをみんなもっと見ようよ。小さいグループで満足せずに、そのために『自分』という言葉をまず禁じてみよう」

山本「みんなメモした?!素敵なお言葉。忠恭さんはどういうところからそういうことを学ぶんですか?」

小澤「僕は新聞を読んでいたから、いろんな情報が載っていたんだよ。でも今はネットで好きなニュースしか見なくなるでしょ。そうすると一つの世界で完結しちゃうんだよね。自分を大きくするために、自分へのご褒美をぐっと我慢しよう。よく、『いい写真ってどんな写真ですか?』と聞かれるんだけど、答えははっきりしてる。いい人が撮る写真だよ。いい人というのは、おべんちゃらが上手い人ってことではなくて、興味深い人のことです。話が戻るけど、三脚だっていい人が作っているものを使いたいよね。写真を撮っていて辛くなったときに、三脚を見て、いい人が頑張って作っているものを持っているんだから自分ももうちょっと頑張ろうって思えるんですよ」

山本「プロデュースさせていただいたリュック、marimoaを作るときも本当に楽しくて。打ち合わせが毎回楽しいから、たくさん打ち合わせしたくなってしまって(笑)その度に細かいところまで注文させていただきました」

小澤「そうやって細かいところまで注文するところがすごいと思いますよ。僕だったらある程度まで行ったら流してしまいそう。marimoaは、全然付けなくていいような飾りが付いてますよね」

山本「このスカーフを付けている革と金具の部分なのですが、通常はバッグを締める革として使うものです。でも、わたしは自分の写真を撮るときに『余白』を大切にしていて、その『余白』にエアリーの風を流したいと思っているので、普通はここに熊鈴を付けたりするのですが、このリュックではなんでもしていいよ、というものにしたんです。ここに革を付けたことによって、みんなが遊んでるんです。同じカバンを持っていても、みんな自分を表しているんです」

小澤「作る人の遊びというだけでなく、持つ人の余白を作ってあげたというのはいいね」

山本「あとは、三脚が入る設計にしてほしいというのは強くお願いをしていました。ここに入っているのはVEO2の235CBという三脚なのですが、すごく細くて軽くて、marimoaにすっぽりはいります。」

小澤「前のシリーズよりシンプルになったけれどより頑丈になりましたね。ネジを軽く締めておけば雲台がゆっくり動いて便利だし、石突から金具がなくなったのもいい。」

山本「海外に一人で行ったときに、あえて最大限に三脚を伸ばして歩くんです。何が起こっても大丈夫っていう状態にしておくんですよ(笑)」

小澤「確かに、僕もイノシシがいるような山なんかは三脚を伸ばしますよ。動物に向けていると来ないんですよ。ちなみに、僕は車に三脚を4つくらい積んでいます。車で行くと山中で寝ることができる。夜明けを撮りたいときに、前の日の明るいうちにロケハンで行って、降りないで車の中で待つんです。それで車からどれだけ歩くかで三脚を決めるんですよ。たくさん歩くときは軽い三脚を持っていきます。カメラバッグも4つ持っていて、宿泊が必要なときは大きいものを使うなどして使い分けています。カメラバッグってさ、本当にいろんな種類があるし、新作も毎年増える。ということは人のニーズはそれだけ細かいっていうことなんだよね、きっと」

山本「marimoaは左右ちょっと違う形をしているのですが、ペットボトルを入れたり三脚を入れたり、左右で違った使い方をしてほしいなと思っているんです。キャッチコピーは『街も、山も、気分はパリ』。生徒さんと食事をしながら考えていたのですが、『街でも山でもパリ気分になれるようなバッグにしたいんだよね』と相談したところ、『そのままでいいじゃないですか!』と言われて決定しました(笑)」

小澤「そろそろ時間ですね。今日は僕は『自分』ということについてお話しました。探すというより広げるという方に重点を置いた方がいいのではないかということです。今回全部はご紹介できませんでしたが、これらの三脚は4月発売なのでチェックしてみて下さいね」